今回の特集は、96年に発行された生活情報誌『デンマークに暮らす』の改訂版を2002年に発行するにあたり、改訂版の内容を吟味する上で、活発な意見交換をしていただいた。ユトランドやフュンからも参加者を得、にぎやかな座談会となりました。
出席者
コペンハーゲン在住5年、コペンハーゲン大学学生
司会
JDNet編集員、Ishoej在住2年、フリーランスの翻訳業
実施日:2000年10月15日
司会:
本日は、みなさんお忙しい中、中には遠方からわざわざおいでいただきまして、本当にありがとうございます。『デンマークに暮らす』の改訂版の発行に向けて、と言うことで、みなさんから、活発なご意見を聞かせていただきたいと思っています。
では、まず最初に、デンマークに来て、長い方も短い方もいらっしゃると思うんですが、住む前と住み始めてからで、何か日本とは違ったことで、驚いたことや困ったことなど、お話していただけますか?
君子:
一番困ったことは、やっぱり言葉、ですね。日常会話って言うのが一番大変でしたね。言葉のハンディをつくづくを感じましたね。
めぐみ:
ただデンマークって言うのは日本と違って、学校に行かせてもらえますよね。
君子:
私の頃はね、全然援助がなっかたの。自分のお金で行かなくちゃいけなかったの。
クラスも町が小さいからか、働く人のためのデンマーク語で職業的と言うか、一般的な日常会話ではなかったんですよ。だから、ついていくのが大変でした。
めぐみ:
今は学校行くのは無料ですよね。それで辞書とかも、いただきましたよ。
紀子:
え、そうですか?場所によって違うんじゃないでしょうか?コペンハーゲンは違うと思います。
めぐみ:
オーデンセはそうでした。でも例えば、*Afgansproeveだとか、テストを行なう時に、お金のかかるテストっていうのはありましたけどね。
司会:
まあ、言葉が分からないといろいろ生活面で不便があると思うんですが、情報を集める時に、役に立ったものは何かありましたか。
君子:
私の場合は、日本の情報なんていうのは全然なかったからね。
司会:
27年前ですものね。
君子:
そう、当時は日本食品もそんなになかったしね。白菜なんて、最近でしょ。当時はほとんどないから、食べ物にもそういう意味では困ったわね。だから、生きていかれるかな、なんて思ったわよ(笑)
司会:
例えば理恵さんなんかは、留学生としてこちらにいらっしゃって、ちょっと困ったなあとか、ずいぶん違うなあとか、思われたことありますか?
理恵:
私はやっぱり最初に困ったのは、日曜日に店が全部しまっちゃうことでしたね。こちらに来てすぐに、ちょっと学会で出かけていて、帰ってきたのが日曜日の夕方で、食べ物も何にもない状態で、ほんと困りましたね。コンビニの場所とかも、その時は知らなかったので、。
司会:
そう言った情報は、前もって日本で得られると言うようなことはありませんでしたか?
理恵:
なかったですね。でも、たまたま同じ研究室に日本人の方がいらして、その方からいろいろ教えてもらって、という感じでした。
司会:
井出さんの場合はいかがですか?
井出:
僕の場合は住むところ、これがなかなか見つからなくて。最初は、学生としてきたので大学がドミトリーを紹介してくれて、そこで住むことができたんですが、数年経って、お金をもらうようになって、寮を出ないといけないと言うことになって、で、その時に一般のアパートを探してたんですけど、全く捜せなくて、結局デンマーク人と共同でひとつのアパートをシェアーするということになったんですけど、またこれが、生活習慣の違いと言うのが、いろいろありまして、まあ、こういう不満は言ってはいけないんでしょうけど、
そういう生活習慣の違いから、トラブったりとか、ありましたね。
司会:
例えば、紀子さんの場合は一旦こちらにいらっしゃってて、一度日本にお帰りになって、またこちらで暮らし始めた訳ですよね。最初にいらした時と、また戻ってこられた時と、何か違った部分とかありましたか?
紀子:
そうですね。最初に住んでた時は子供がいなかったので、かなり自由に行動してたんですけれども、こちらで最初の子を出産して、すぐに日本に帰ることになって、子供が3歳半の時にまたこちらにきたんですね。その子供の、子育てに関するこちらでの情報と言うのを、あまり集めていなかったので、またゼロから始めなければいけなかった。それが、ちょっと大変でしたね。
司会:
みなさん、それぞれ違った状況の中、いろいろな体験をなさっているわけですよね。さて、この『デンマークに暮らす』という生活情報誌なんですが、96年に出版されたんですが、実際にはみなさん、どんなふうにお使いになっていましたか?
めぐみ:
私は実は持っていないんですが、内容的にはコンパクトですごくいいと思います。取り入れてあるものとか、ほんとに必要なものは、一応カバーしてるんじゃないかなと思います。もし余裕があれば、どなたかのおもしろい体験談など、入っていてもおもしろいかなとは思いますけど、インフォメーションの本としては、すごくいいと思います。大きさも小さすぎず、しまい込んで、どこにやったかわからないなんてこともないだろうしね。
君子:
そうよね、結局、本箱においておいて、いつでも時間のある時にね、さっと見れるっていうか、あ〜、こんなこともあったんだあ〜、なんて私は見てました。だけど、私の不満はね、シェーランドの情報が中心で、地方の情報がなかったと言うのが、残念でしたね。改訂版にはユーランドやフュンの情報も、載せた方がいいでしょうね。求めている人も多いと思います。
司会:
井出さんは、具体的に何か利用されてました?
井出:
僕はデンマーク語の学校に行く前に、ここで紹介されていたので、どこにコンタクトを取ればいいかとか、載ってましたから、まあ、そういう意味で役に立ちましたね。
司会:
そうですね。私の場合なんですが、主人もここの人間じゃないので、お互いにわからないことがいっぱいあったんですね。だからこの『デンマークに暮らす』と、あと、英語でコペンハーゲンの情報が載っている別のグループのがあったので、それを買って利用したんです。ここは特に水が違いますよね、シャワーが突然でなくなった、とか、あるいは洗剤をどれを使ったらいいのかわからない、とか、そう言う時に、こういう情報誌を見て納得したりとか、そんなふうに使ってたんですけどね。
めぐみ:
そうですよね。シャンプーひとつにしても、泡が立たない。これはだまされたかと思いましたけどね。水なんですよね。
君子:
うちの地区はね、水は問題ないんですけど、ラングランドに遊びに行った時に、石鹸の泡が立たない。この石鹸ずいぶんおかしな石鹸だな、なんて思って、そしたらうちの主人がカルキがたくさんあり過ぎるからだって。だから洗濯機なんかよく故障するって言ってましたよ。
めぐみ:
Esbejrgのほうは、水いいそうですね。うちも今洗濯機、故障してます。
君子:
あのね、酢を使えばいいのよ。最後のすすぎのときに、酢を使えば機械にもいいし、服にもいいのよ。
めぐみ:
それと、服がだんだんグレーになってきすよね。
君子:
酢が色も保ってくれるわよ。
めぐみ:
じゃあ、そういうことを*Bedstemorの知恵じゃないけど、書いていただければ、いいですよね。
司会:
そうですね。今たまたま提案にもなりましたように、この96年判の『デンマークに暮らす』でカバーされていることと、改訂版でさらにカバーして欲しいこと、って言うのがあると思うんですが、具体的に何かこう言った内容もちょっと入れた方が、いいんじゃないか、というのがあれば、お聞きしたいんですが、理恵さんどうですか?
理恵:
やっぱり、すごく環境が違うと思うので、デンマーク社会と日本の社会と。だから、『ここが根本的に違う』っていう、なんか最初に簡単にでもいいから、そういう情報が欲しいです。例えば『車は右側走ってるぞ!』みたいな、道路一つ渡るにしても、反対から見ないといけないし、最初の頃、危なかったんですよ。
君子:
そうよね。日本と違うからね。まちがって見て、いないなと思ったら自転車が来たりね。
めぐみ:
そう言えば、一昨年だったか、オーデンセに大学院留学生で来ていた方が、自転車の赤信号って日本にないでしょ。あれを知らないで、無視して罰金取られて。400クローネだったかな、でもやっぱり知らないと頭に来ますよね。そういったことも、情報としては必要かもしれませんね。信号がふたつあるっていうようなことをね。
君子:
でも、私なんか車でフュンに行った時ね、信号ふたつあって、ユーランドにはないから、びっくりしましたね。
紀子:
同じ国でも違うんですね。
めぐみ:
フュンは特に多いって聞きましたね。
君子:
だからそういうのも、びっくりしないように、入れた方がいいかもしれませんね。もっと交通の情報を。自転車の電気もそうでしょ?あれもつけてないと罰金ですからね。
理恵:
前後にいりますよね。日本だと注意されるくらいですよね。
めぐみ:
自転車とか、交通情報はもっと入れておいた方がいいでしょうね。
井出:
あと、切符。電車とかバスとか。あのブルーと黄色とグレーのカードの使い方とか。
司会:
私もわからなくて、その度その度、入れてましたもの。意外と分かりにくいですよね。日本だとJRと私鉄とあって、そういう違いがあるから、だから1枚の切符でどこらへんまでいけるのかっていうのは、よくわからないですよね。紀子さんはどうですか?
紀子:
さっきの交通の話で思い出したんですけど、最近だと思うんですけど、コペンハーゲンの、
NoerbbroとOEsterbroとVaesterbroのなかでは、日中2時間以上駐車をしてはいけない、というふうに決まったようなんですけど、例えば、そういう新しい規則が決まった時に、この『デンマークに暮らす』を5年毎に出していくとしたら、新しい情報を載せるのは難しいんじゃないかな、と今思ったんですけど、、。
めぐみ:
そうですよね。でもそういう場合は、会報誌を出す時に1ページでも差し込めるように、その度にそういう情報を載せていったらどうかな、と思いますね。それをもって、自分で改訂していくと、それくらいはまあ、自分でしないとね。
紀子:
難しいですよね。どんどん変わっていく法律なんかは。
司会:
やはり、今は情報化社会で、どんどん情報は変わってきますよね。そういう意味ではみなさんもインターネットをご利用なさってると思うんですけど、そういった中でやっぱり、この本だけではカバーできない部分が多くなってきていると思うんです。ですからそういうアップデートできる情報は、インターネットを利用してホームページなどでカバーしていくとか、そうしてカバーしながら、これを何年かに1回改訂していく、という形がいいと思うんですけれども、どうですか、みなさんはどのくらいインターネットを利用していらっしゃいますか?
君子:
私はE-Mailを使ってます。少しはできますけど、そんなに詳しくはないです。しょっちゅう使ってる訳でもないので、すぐに忘れてしまうんです。それで、えっと思うと、息子に聞く訳。どうだったけ?ってね。だから息子がいる間は使えるけど、いなくなったら使えないんじゃないかな、、。
歳もあるし、忘れていくでしょ。
紀子:
インターネットは便利ですよね。例えば銀行なんかの振り込みもできるし。
めぐみ:
うちは、ネットを引いていなくて、ネットと言えばテレビに入ってくるものだけなんです。なので、夫の両親の所にいって、活用していると言う感じですね。毎日って訳にはいきませんけど。
司会:
『デンマークに暮らす』のなかには、今まではそういった情報を、インターネットから得ると言うような項目は入っていませんでしたから、改訂版では入れていくことも必要ですね。また、大使館関係の情報もホームページがありますしね。改訂版をもとにして、そういう情報を得るために利用していただければ、と思っています。
あとは、先程もちょっと出たんですけども、比較的デンマークの中でもコペンハーゲンの情報が中心になっていたようで、でも最近はかなりいろんな都市に日本人の方が、結婚したりあるいはお仕事でいらしてたりすることが多いと思うので、そういった地方の情報を得るためには、どうしていったらいいか、というあたりでどうですか?何かいいアイデアはありますか?
君子:
ユーランドにはオーフスを中心に、大学にいってる人も多いでいでしょ。だから、ユーランドの副会長さんでしたか、にお願いして情報を集めてもいいんじゃないですか?オーフスやオールボーには、たくさん日本人いらっしゃると思いますよ。でも、そういう情報はやっぱりその土地に住んでいる人に聞いて、集めたほうがいいでしょうね。
めぐみ:
オーフスは、若い人も多いので、いろんな情報を持っていると思いますよ。
司会:
理恵さんや井出さんは留学生で来てらして、他の大学に来ている日本人留学生と、情報交換や意見交換などなさってますか?
井出:
私は全くなかったですね。
理恵:
私もないです。
井出:
というのも、他に日本人の学生っていうのが僕の場合はまわりにいなかったから。でも、クンストアカデミーとかには、けっこう日本人もいるから、彼らはいろいろ情報交換をしているみたいですけどね。
我々ができるネットというか、学生連盟みたいなものがあればいいんでしょうけどね。
司会:
たとえば、『デンマークに暮らす』のような情報誌が日本で手に入っていたらどうですか?留学生のみなさんにとって、利用価値はありますか?
理恵:
絶対いいと思います。来る前にデンマーク語の語学の教材を探したんですけど、まず絶対的に数が少ない。東京でもかなり手に入りにくい状態で、もちろん、こういうのがあったらいいと思います。
紀子:
助かりますよね。
司会:
私もデンマーク語の文法書みたいなのをどれを買ったらいいかわからなくて、でも確かこの中に紹介されていて、親に頼んで送ってもらいましたけどね。観光するための情報はいろいろあっても、実際に生活するための情報は少ないですものね。
君子:
だから、もし来る前にこういう情報誌が日本で手に入ったら、子供の教育や日常生活もいろいろわかって、便利だと思いますね。
めぐみ:
日本で手に入るのはいいかもしれないけど、発行部数や、販売方法を考えると、いろいろ難しいですよね。
司会:
そうですね、やはり改訂版出版にあたっては、いろいろクリアーしていかないといけない問題があるんですね、ファイナンス面であるとか、それから、企画、実務、販売方法、というように、難しい部分がいっぱいあります。
君子:
前回のは、日本食品の店とかで売っていましたよね。改訂版は日本で売って収入を得ることも考えられますか?
めぐみ:
でも、基本的には無収入と言うか売ることは目的としないで、かかる費用が出ればいいんじゃないですか?どうなんですか?
司会:
そうですね。実際には、印刷代はかかりますし、人件費もかかるかもしれませんし、まだ数字は出せていませんが、けっこうな予算がかかります。
めぐみ:
その予算さえカバーできれば、利益を求める為に出版するわけではないから、安くみなさんにお分けして、もっと快適にデンマークで暮らしていただく、という主旨で出版するのが、一番理想ですよね。
司会:
そうですね。でもある程度の予算を確保するためには、やはり広告収入も必要ですしね。
君子:
そうでないとまかなえないですよね。
司会:
また、手伝っていただける方への報酬なんかも考えていかないといけないんですが、ある程度は、ボランティア的な活動力に頼らざるを得ない部分もあります。
紀子:
この『デンマークに暮らす』の読者の対象っていうのは、例えばデンマークに長期滞在する人のためのものなのか、数年間の短期滞在の方のものなのか、どちらかに分けるとすれば、どちら向けなんでしょう?
司会:
どう思われますか、みなさんは?
君子:
それは、両方じゃないの?
紀子:
ただ私が思ったのは、私なんかはもう少し政治についての情報が欲しかったんですが、例えばデンマーク人と話す時に、日常会話で終わらずに、もっと深く話す時には、どうしても政治やデンマークの抱えている問題など、そういうものまで話せるようになっていないといけないと思うんですよ。それをここに載せるべきなのか、それともそれは、自分で新聞なんかを読んで、調べるべきものなのか、、。
君子:
やっぱりそういうことは自分の力で応対するしかないと思うね。それをいちいちここに載せることはないと思う。
紀子:
やっぱりそちらなんでしょうかね。ここに載せるものではないんでしょうかね。
めぐみ:
載っていてもいいけれど、やはり余りにも大きなテーマなので、ここには重すぎるでしょうね。
司会:
まあ、デンマークの一般情報的に、国民性として、デンマーク人が政治の話が好きであるとか、そういう情報は、載せてもいいでしょうね。または、デンマークの歴史を研究されている専門の先生にお願いして、歴史的背景を簡単にまとめていただいて、載せてもいいかもしれませんね。
あとは、短期でいらっしゃる方のための基本的な情報ですよね、やはり。
司会:
いろいろとみなさんから、貴重なご意見を聞いてきたわけですが、最後に、これだけは入れて欲しい、載せて欲しい、というご要望などございましたら、聞かせていただけますか?
井出:
日常生活に必要な単語集、表現集、みたいなのがあるといいですね。多少は入ってましたかね。
司会:
ええ、でももう少し日常生活で役に立つ会話集的なものですよね。紀子さんは?
紀子:
私は、今は育児と言うか、子供関係の情報ができるだけ欲しいですね。デンマークでの育児。
めぐみ:
私は、やっぱり、こういうところがデンマーク人と日本人と違いますよっていうような、例えば*Jantelovenってありますよね。出る杭は打たれるじゃないけど、突出することを好まない国民性みたいな。そういうところがあるっていうことを、心構えできるように、入れておくといいんじゃないかと思いますね。
君子:
私はね、みなさんより長いでしょ、そうすると今の不安って言うのは、歳をとってボケたら、何語をしゃべるんだろう、ってことなの。そういう不安がありますね。だから、歳をとってからのことで、いろいろ知っておいた方がいい情報、なんかもあるといいですね。
司会:
切実な問題ですよね。老後の生活と、年輩の日本人同士ができるネットワーク的な情報もあるといいですよね。理恵さんは?
理恵:
重なりますけど、やっぱり文化の違いや、気質的に違う部分で心構えがいることがありますよね。それを知らないとカルチャーショックを受けると言うか。そういう知っておくとありがたいことを、これだけは知っておこう!みたいな心構えとして載せていただけたら、と思います。
司会:
今日いろいろなお話をみなさんからお聞きして、この本がみなさんのデンマークでの生活に果たす役割を、改めて感じさせていただきました。ここで頂戴したご意見だけでなく、またこの記事をお読みになった、会員の皆様からも、いろいろご意見をいただきながら、よりみなさんのご要望にお答えできる、改訂版の出版に向けて、編集委員会を発足していければと思います。会員の皆様にも編集に関して興味を持っていただき、ご協力いただければ、なおありがたいと思います。本日はほんとうにありがとうございました。
*Afgangsproeve=終了試験
*Bedstemor=おばあちゃん
*Janteloven=他人より秀でてはいけない、という決まりがJanteという町にあったことから、この呼称で伝えられている作法、習わし。