シリーズ第2回は、Mitsubishi Motor Sales Denmark A/Sを訪問した。社長の松坂正 顕さんに会社の事業内容からご家族のことまで、大いに語っていただいた。
松坂社長のプロフィールについてお聞かせ下さい。
私は98年の6月に赴任しました。もうすぐ丸2年デンマークにいることになります。三菱自動車に入社して23年になりますが、ほとんどの勤務が海外事業とは関係のない部署だったのでデンマークへの赴任が生まれて始めての海外勤務になります。私のような経歴で海外配属になった例は珍しいかもしれません。
Mitsubishi Motor Sales Denmark A/S(以下MMSD)の事業内容についてお教えいただけますか。
三菱車がデンマークで販売されたのは78年頃からです。当時は商社や地元企業をアポイントして輸出をしていました。その後、自前で海外進出し進出先からオペレーションをしようという動きが出てきまして、欧州本部がアムステルダムに置かれ、デンマーク以下欧州10カ国に輸入販売に関する仕事を行なう子会社が設置されました。MMSDは1990年に設立されました。
欧州のオペレーションでは、オランダにあるVolvoと共同出資したNedCar社で乗用車の生産を95年より行なっています。そこでは、デンマークでも人気の高いカリスマ(CARISMA)やスペーススター(SPACE STAR) を生産しています。これらの車はヨーロッパ市場の為にデザインして作られた、純ヨーロッパ車といえます。また、トラックについてはポルトガルに工場がありキャンター(CANTER)を生産しています。
MMSDではこういった三菱のヨーロッパ生産車、日本生産車、さらに日欧以外の地域で生産された車を広く扱っており、ディストリビューターとして発注から通関、在庫、卸売までの輸入業務にとどまらず、傘下ディーラーを含めた流通全般の管理を主な業務として行なっています。現在社員は46名、昨年の新車登録台数は約5,300台でした。
三菱自動車と言えばモータスポーツ、特にラリーを思い浮かべる方も多いと思います。ワールドラリーチャンピオンシップ(WRC)ではトミー・マキネンがランサーで高得点を挙げていますし、有名なパリダカールラリーにはパジョロが毎回参戦し、幾度も優勝しているのでご記憶の方も多いと思います。パリダカールラリーには毎年何チームも出場するのですが、中でも篠塚健次郎は三菱自動車の社員でありながら日常業務をこなしつつ毎年出場、入賞しているので海外からも高い評価を受けています。(取材者:ああ、あの三浦百恵さんの義理のお姉さんが奥さんの…)そうそう、あの篠塚さんです。
デンマークの会社で働かれているご感想などお聞かせ下さい。
私はデンマークが初めての外国だったせいか、もともと日本と違っていて当たり前だと思って赴任しました。デンマークと比較する他の外国も知りませんし。そのせいか、日本と違うことはもちろん多々あるのですが、「まあ、こんなものかな」と思いながら対応してきました。
ディーラー(販売店)を招待したり、または社内でパーティーする機会があるのですが、必ず替え歌の歌詞が配られて、皆で三菱自動車の歌を歌ったり、誰かがグラスをたたいてスピーチを始めたり、まあ随分日本の宴会と違うので、これにはビックリしましたけれども。
ディーラーを訪問して話をする機会が多いのですが、ディーラーのオーナーの多くは、もともと叩き上げの修理工だったりして、本当に車が好きな人が多い。自分で古い車をピカピカにリストアしてコレクションをしている人も多いんです。私自身も車は大好きなので、それがたとえ三菱の車でなくても「ほう〜、メカニックはどうなってるんですか?」とつい話が弾んだりして、とても楽しいですね。
ご家族の皆様も、デンマーク生活を楽しんでおられると伺いましたが。
家族は99年4月にこちらに引越してきました。日本人だと、多かれ少なかれ、やっぱり外国人の方とお付き合いするのはいろいろ気後れがあると思います。妻は、子どもの学校の父兄のお付き合いから自然とお国の料理を教え合うサークルのようなものができて、幸い楽しくいろいろな方とお付き合いしているようです。あまり日本人が周りにいないことが、日本人だけのお付き合いから一つ壁を超えて、いろいろな人と付き合えるようになったきっかけになったと思います。
子どもは中2と小4の男の子ですが、上の子は日本では野球チームに入っていたのですが、野球がデンマークにはなくて残念だったようです。二人とも今はプレーステーション2とカードゲームに夢中です。ただ、こちらの子達は、同じプレーステーションのゲームでも楽しみ方が違うようで、日本の子供たちのようにとことんやるということがないようです。息子たちもこちらの子供たちとも一緒になってよく遊ぶのですが、ゲームに関しては、その点彼らは物足りなく思っているようです。どうも、日本の子どもと他の国の子どもの興味の方向が違うようなんです。そういう違いを見ると、私もつくづく面白いもんだなあと思いますね。
秘書の高倉尚子さんから一言
社長以外の唯一の日本人スタッフとして、社長秘書をしています。皆、アットホームな雰囲気で和気あいあいとやっています。社内のパーテイーでも家族を連れて集まることが多いですね。 食堂では1ヶ月150クローネでビュッフェ式で食べ放題です。社長以下、社員そこで食事をとるんですよ。
取材日:5月16日