シリーズ第1回は、日本人会の事務局としてオフィスを提供していただいている、DNP Denmark社を訪問。業務内容や、商品の説明など、親切に対応していただいた。
DNP Denmark AS
KoebenhavnとKoegeの中間あたりに位置するKarlslundにDNP Denmark社はある。敷地面積21,500F、建て屋面積6,500Fという規模のモダンで立派な建物の中で、リアプロジェクションタイプスクリーンが開発、製造されている。
もともと日本での会社名はDai Nippon Printing (大日本印刷株式会社)、しかし時代の変化に伴って、印刷業から今では様々なスクリーンの開発や半導体の分野までと、事業範囲は広域にわたっている。その中でのDNP Denmark社の役割は、特殊大型のリアプロジェクトタイプスクリーンを製造し輸出販売すること。
1998年にできた素晴らしいショールームへ、東はオーストラリアやシンガポールなど、アジア・オセアニアから、西はカナダ、南は南アフリカなど世界各国から視察のための来訪があるという。
このリアプロジェクションタイプ大型スクリーンは、アメリカ・ヨーロッパ・アジア・日本など世界約30カ国へデンマークより輸出されている。全販売数のうち、約1%がデンマーク国内、残り99%は輸出となっているというのだから、このデンマークで国際的企業としての活躍がうかがえる。
リアプロジェクションタイプ大型スクリーン
このスクリーンは、映画館のスクリーンやオーバーヘッドプロジェクター(OHP)のように、スクリーンの前から光をあてて映像を映し出す方式とは反対に、テレビのようにスクリーンの後ろから光を当てて映像を映し出すリアプロジェクションに使われるスクリーンである。Fresnelレンズ・Lenticularレンズと呼ばれる2枚のアクリルのレンズでできていて、スクリーンの後ろから投射される光を効率よく、あらゆる角度の視聴者
からでもきれいに見ることができるよう、プラスティックのスクリーンの表面(つまりレンズ)に、手で触ってもわからないほど細かい凹凸が精密に計算されデザインされている。この凹凸は、顧客のニーズ、つまり使用される場所の大きさや環境に伴って変わってくるため、工場ではカスタムメイドの金型起こしから、液体のアクリルを成形してレンズを作りスクリーンとして仕上げるという工程が行なわれている。
こうして作られるこのスクリーン、普通映画館などで使われているスクリーンは、部屋を暗くしないときれいに見えないが、このスクリーンは周りが明るい環境でも、あらゆる角度より鮮やかに画面を見ることができる。また、スクリーンの後ろから映像を映し出すため、スクリーンの前を人が通っても人影が移らないといった利点がある。そのため、この大型スクリーンは世界各国の美術館や会議場、スポーツアリーナや、日本の防衛庁、その他特殊な場所としては中国の人民大公会堂の広場などに納められている。また、デンマーク国内では、DNP社のショールームの他に、コペンハーゲンのデザインセンター、DR1のスタジオでこのタイプのスクリーンを見ることができる。
質の高い従業員
このような精密さを要求する仕事のため、もちろん工場で働く従業員にも質の高さが要求される。そういった意味では、デンマークの労働者は人件費は高いものの、大変質が高く、また自分の仕事に誇りを持って働いているので、こういった特殊向け高付加価値商品の生産には適しているそうだ。
また、デンマークの社員ほとんどが、英語でコミュニケーションできるので、日本経営陣として非常に運営しやすいそうだ。
土屋社長のお話では、従業員は100名、そのうち日本人スタッフは土屋社長のほか、技術担当の甲斐さん、管理担当の福本さんで、社員の間に上下の厳しい関係はなく、皆さん気軽に話ができる関係にあるそうだ。年に2回開催される社内のパーティーでは、社員みんなで朝までどんちゃん騒ぎになるという。特に今年(1999)12月で、DNPがここデンマークの「スキャンスクリーン」という会社を買収し、こちらにDNP Denmark社として進出して10周年にあたり、社内での10周年パーティーが企画されている。どのようなお祭り騒ぎになるのか楽しみということであった。